日本のはじまり 原文

このページでわかること

別天つ神・神世七代の誕生

世界の成り立ちと、これから登場する神様たちがなんとなくわかるページ。ただし、神様の名前の羅列なので、覚えなくてOK!

安万侶

えっと……?

天武

はーーーっ♡

天武

よし!
じゃあ、早速いくか!

安万侶

あ、はい!

天武

……と言いつつ、ここが古事記最大の難関なんだ

安万侶

Oh…

天武

ここで99%の人間が挫折する

安万侶

えっ!?何でですか?

天武

ほら。小説を書き始めた子が、『オレの考えた設定すげー!』って時期に、一度は通るやつだよ

安万侶

む?

天武

最初の1ページ、登場人物紹介と世界設定しか書いてない

安万侶

アッ……!

天武

この先は、ひたすら神様が生まれ続ける

天武

全員覚えようとしないでいいから、ざっと読み流すくらいで十分だ

天武

重要な神は何度も出てくるから、自然に覚えられるよ

安万侶

はーい、わかりました!

古事記の原文

原文安万侶 天地初発之時、於高天原(訓高下天云阿麻。下效此)成神名、天之御中主神。次高御産巣日神。次神産巣日神。此三柱神者、並独神成坐而、隠身也。次国稚如浮脂而、久羅下那州(此五字以音)多陀用弊流之時、如葦牙因萌騰之物而成神名、宇摩志阿斯訶備比古遅神(此十字以音)。次天之常立神。此二柱神亦、独神成坐而、隠身也。上件五柱神者、別天神。次成神名、国之常立神。次豊雲野神。此二柱神亦、独神成坐而、隠身也。次成神名、宇比地迩神、次妹須比智迩神。次角杙神、次妹活杙神。次意富斗能地神、次妹大斗乃弁神(自意至弁以音)。次於母陀流神、次妹阿夜訶志古泥神(自阿至泥以音)。次伊邪那岐神、次妹伊邪那美神。上件自国之常立神以下、伊邪那美神以前、并称神世七代。(上二柱独神、各云一代。次双十神、各合二神云一代也。)

読み下し文&現代語訳

読み下し文|阿礼

天地あめつち 初めて ひら けし時、 高天たかあま の原に成れる神の名は、天之御中主神あめのみなかぬしのかみ
次に高御産巣日神たかみむすひのかみ
次に神産巣日神かむむすひのかみ 
この 三柱みはしらの神は、みな 独神ひとりがみ と成りまして、  を かく したまひき

現代語訳|不比等

と地が初めて開けた時、高天原で最初に現れた神の名前は、天之御中主神あめのみなかぬしのかみと言う
続いて、高御産巣日神たかみむすひのかみが現れ
次に神産巣日神かむむすひのかみが現れた
この三柱みはしらの神たちは、みな対となる相手を持たない「独神ひとりがみ」として生まれ、その姿をお隠しになった

読み下し文|阿礼

次に くに わか く、浮きしあぶら の ごと くして、 海月くらげなす漂へる とき 、 葦牙あしかび の如く  え あが る物によりて成れる神の名は、宇摩志阿斯訶備比古遅神うましあしかびひこぢのかみ 
次に 天之常立神あめのとこたちのかみ 
この二柱ふたはしら の神もまた、独神と成りまして、身を隠したまひき

現代語訳|不比等

次に、大地はまだ若く、固まりきっておらず、水面に浮かぶ油や、海月くらげのように形も定まらず漂っていた頃のこと
葦が芽吹き、萌え上がるような力によって現れた神は、宇摩志阿斯訶備比古遅神うましあしかびひこぢのかみ と言う
続いて、天之常立神あめのとこたちのかみ が現れた
この二柱ふたはしらの神たちもまた、独神として生まれ、その姿をお隠しになった

読み下し文|阿礼

かみ の くだり の 五柱いつはしら の神は、別天ことあま つ神

現代語訳|不比等

上記の五柱いつはしらの神々は、特別な天の神々であり、「別天ことあま つ神」と言う

読み下し文|阿礼

次に成れる神の名は、国之常立神くにのとこたちのかみ
次に豊雲野神とよくもののかみ
この二柱の神もまた、独神と成りまして、身を隠したまひき

現代語訳|不比等

次に現れた神は、国之常立神くにのとこたちのかみと言う
次に、豊雲野神とよくもののかみが現れた
この二柱の神たちもまた、独神として生まれ、その姿をお隠しになった

読み下し文|阿礼

次に成れる神の名は
宇比地迩神うひぢにのかみ 
次にいも 須比智迩神すひぢにのかみ
次に角杙神つのぐひのかみ 
次に妹 活杙神いも いくぐひのかみ
次に意富斗能地神おほとのぢのかみ
次に妹 大斗乃弁神いも おほとのべのかみ
次に於母陀流神おもだるのかみ
次にいも阿夜訶志古泥神あやかしこねのかみ
次に伊邪那岐神いざなきのかみ
次にいも伊邪那美神いざなみのかみ 

現代語訳|不比等

次に現れた神は
宇比地迩神うひぢにのかみ
次にその対となる女神
須比智迩神すひぢにのかみが現れた
次に角杙神つのぐひのかみ
次にその対となる女神
活杙神いくぐひのかみ
次に意富斗能地神おほとのぢのかみ
次にその対となる女神
大斗乃弁神おほとのべのかみ
次に於母陀流神おもだるのかみ
次にその対となる女神
阿夜訶志古泥神あやかしこねのかみ
そして最後に伊邪那岐神いざなきのかみ
次にその対となる女神
伊邪那美神いざなみのかみ が現れた

読み下し文|阿礼

上の件の国之常立神以下よりしも、伊邪那美神以前よりさきを、あはせて神世七代と

現代語訳|不比等

この国之常立神から伊邪那美神までを、まとめて「神世七代かみよななよ」という

読み下し文|阿礼

(上の二柱の独神は、おのおの一代と云ふ。次にならべる十神は十神は、おのおの二神を合はせて一代と云ふ)

現代語訳|不比等

(先に現れた二柱の独神は、それぞれ一柱で「一代」と数える。次に現れた男女一組の十柱の神たちは、男女の二柱を合わせて「一代」と数える)

天武先生の用語解説!

天武

よーし!
そしたら、最初はわけ分からないことだらけだと思うけど……そのうち慣れるから

天武

とりあえず、分からない用語をざっくばらんに聞いてくれ!

安万侶

はーい!
そしたら、早速……

安万侶

未来のまろが苦労して書いた(注釈)のほとんどが、読み下し部分で消されているんですけど、どういうことですか?

天武

えっと、それは、ごっ……ごめん……

安万侶

誰かさんが「昔ながらの音が残したい」とか言うから、ひらがなもカタカナもない時代に万葉仮名駆使して頑張りまくったんですが???

天武

うん。それは、めっちゃ感謝してる。頑張ったの、すごく分かる。でも、一回、話聞いて?

安万侶

……納得のいく言い訳があるなら聞きましょう

天武

えっとだな……古事記の原文には安万侶が残した注釈が多くある。だから原文では、その注釈もできるだけ残した

天武

ただ、今はひらがなもカタカナもある時代だから、「ここは○○と読む」っていう読みの注釈は、混乱の原因になる

天武

だから読み下し文以下は、省略させてもらったんだ

天武

安万侶さん……いかがでしょうか?

安万侶

なるほど。だから、内容に関わる最後の「神世七代」の注釈だけは、ちゃんと訳したんですね……

天武

そういうこと!

安万侶

それなら納得です!

天武

よかったー!!!

安万侶

じゃあ、気を取り直して質問です!

安万侶

高天原たかあまのはらって天界のことですよね?

天武

ああ、『高い天上にある原』ってそのまんまの意味だ

安万侶

でも最近は、『たかまがはら』の方がよく聞く気がします!

天武

まぁ、歴史が長いからな。時代によっていろんな読み方が生まれて、今は『たかまがはら』が一般的だ

天武

でも、安万侶が注釈で「高」の下の「天」は「あま」と読めって書いてるからな。研究者の中には、『たかあまのはら』や『たかのあまはら』と読む人も多い

天武

つまり、「たかまがはら」「たかまのはら」「たかあまのはら」「たかのあまはら」、どれで読んでもいいってことだな!

安万侶

おー。さすが、正式な国名が「二ホン」でも「ニッポン」でもどっちでもいい国!

安万侶

3柱とか2柱は、神様の人数ってことですか?

天武

そ。神様は「柱」で数えるんだ。1人2人じゃなくて、1柱2柱ってね

天武

鬼滅の「柱」もこれがモチーフだろうな!

安万侶

煉獄さんだ!!!

安万侶

独神ひとりがみはどういう意味ですか?

天武

後で男女一対になった神様が出てきただろ? あれに対して、相手がいない一人だけの神様ってことだ

安万侶

性別がないってこと?

天武

あー。それは正直、書かれていないから分からない

天武

でも、後から男女一対の神様が出てくるだろ?

天武

だから「まだ男女の区別がなかった神様たち」なんじゃないかな?

天武

そう考えると、世界が少しずつ完成していく流れとしては綺麗だと思う

安万侶

なるー

安万侶

葦牙あしかびってなんですか? 知らない言葉

天武

あしはイネ科の植物のヨシのことだよ。かびは芽のことを指している。ま、草が芽吹くイメージだな

天武

日本は、湿地帯が多いから。昔は、「これでもか!」ってくらい、ヨシが生えていたんだよ

天武

だから、芽吹くヨシは生命力の象徴だったんだろうな

安万侶

別天つ神ことあまつかみって??

天武

天の神様のことを『天つ神あまつかみ』といってね、その中でも特別な神様のことだ

天武

そのうち、『国つ神』も出てくるから。それは、その時に説明するよ

安万侶

はーい!

安万侶

あと、『いも』ってついてる神様たくさん出てきたけど、みんないもうとなんですか??

天武

『妹』は名前に含まれていないよ。『いも須比智迩すひぢに』なら『須比智迩すひぢに』の部分が名前

天武

それと、『いも』は『いもうと』じゃなくて、『大切な女性』って意味だ。今でいう『ハニー』とか『君』みたいな呼び方に近いかな

天武

ま、続けて生まれてきてるから兄妹と呼ぶこともあるけど、同じ両親を持つ訳じゃないから、人の『兄妹』とは違う

天武

飛鳥時代を代表する名歌『紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに我恋ひめやも』でも、元妻に対して『妹』が使われているな

阿礼

「名歌」……?

安万侶

へー! なんか、めちゃくちゃ昼ドラな歌ですね!

天武

へっ!?

不比等

フッ……

天武

おい、笑ってんじゃねーよ、不比等。みんな大好きだろうが。昼ドラ

不比等

失礼しました。陛下は特にお好きですもんね。昼ドラばりのドロッッドロな展開

天武

お前さ……スルーしてやるから感謝しろな?

不比等

お心遣い、痛み入ります

天武

まぁ……つまり、ここの『妹』は『その妻』くらいの意味で考えると自然ってことだな

安万侶

はい、わかりました!

安万侶

あと、たくさん出てきた神様たちは? 何か意味とかあるんですか??

天武

んー。読み飛ばしても支障はないけど、せっかくだから、1柱ずつ、意味を説明しようか

天武

安万侶も言葉の意味から、何が起こっているのか想像してごらん?

安万侶

はーい!

天武

最初に生まれたアメノミナカヌシは、「天の中心をつかさどる神」だな

天武

まだ何も定まっていない世界に、まず「中心」が生まれたと考えると分かりやすい

安万侶

ふーん。世界の核ができたって感じなのかな?

天武

そうだな。それか、世界そのものを包む空間が、ここで初めてできたと考えても面白いな

天武

……ま、最初に生まれたのに、このあと何も書かれていないから。謎の多い神様だ

天武

次のタカミムスヒは、「高いところで生成をつかさどる神」

安万侶

「生成」って、何か作る神様ってことですか?

天武

んー。造化の神ではあるけど、モノ造りっていうよりは、「ムス」は生まれるって意味だから……

天武

生命や物事を生み出す力を持った神様って考えた方が自然かな?

安万侶

じゃあ、命を生み出すパワーの神様なんですね!

天武

次は、カムムスヒ

安万侶

また出た。ムスヒ!

天武

「カム」は「神」だから、タカミムスヒと並んで、神聖な生成をつかさどる神様って感じかな

天武

この2柱は、忘れたころにまた出て来るよ

天武

次のウマシアシカビヒコヂは、「ウマシ」が、「立派な」「素晴らしい」、「アシカビ」が、葦の芽って意味だ

天武

つまり、生命の芽生えを表す神だな

安万侶

おー。なんか、ボヤッとしてたのがちゃんと形になった気がする

天武

だな!

天武

アメノトコタチは、「天が常に立ち続ける」という名前だ

天武

つまり、これまで曖昧だった天の空間が、しっかりと定まり、高天原の土台ができたんだろう

安万侶

ここまでが、「別天つ神」かー

天武

そ。ここまでで、生命を生み出す力が整ったんだな

天武

ここからは、いよいよ世界が形を帯び始める

天武

クニノトコタチは、アメノトコタチと対になる神だ

天武

今度は「国」、つまり地上の大地が、いつまでも変わらず立つようになったことを表す

天武

次のトヨクモノは、「野原のように豊かに広がる雲の神」だな

天武

オレとしては、この雲によって天と地がはっきり分かれたんじゃないかと考えている

天武

天ができて、地ができて、二つの世界を隔てる「境界の雲」ができる。自然だろ?

安万侶

わぁ! 雲の上の高天原か……幻想的だろうな〜

天武

和風ラピュタだな!

安万侶

バルス!!

天武

いや、壊すな。世界できたばっかだ

安万侶

あ、つい。ごめんなさい

天武

ウヒヂニとスヒヂニは、「泥」と「砂」を表す神だ

天武

水分を含みすぎたり、サラサラで崩れやすくても、なんとなく形を帯びてきているのがイメージできる

天武

ツノグヒとイクグヒの「クヒ」は、「杭」と見る説が一般的だな

安万侶

おー。なんか、固まってきてる感じがする

天武

オホトノヂとオホトノベの「ト」は、「戸」や「場所」を表すと考えられている

安万侶

あっ! わかりました!

安万侶

これって、泥の上に、杭を打って、戸をつけて、家が完成したってことを表しているんですね!

天武

ふっ! ピュアだな……

安万侶

えっ!? 違いました???

天武

いや、間違ってないよ。人が暮らす場所が完成した、と考える説もちゃんとある

安万侶

ふーん?

天武

ただオレは、『杭』で『男性』、『戸』で『女性』という概念が生まれたって説推しかな

安万侶

む? 何でですか? それぞれ男女ペアの神様なのに、さらに男女??

天武

ん〜? 女性ってのは、誰しも見えないところに扉を隠し持っていてだな?

阿礼

オイ、天武。『家の完成を表す』って説もあるんだから、別に安万侶が言った通りでいいだろ

不比等

何でも下ネタに結びつけようとするジジイっているよな。キモチワル

天武

あらやだ。ジジイ劣勢

安万侶

えっ!?下ネタ???なんで????

天武

ま、生命がカタチ作られる過程を表している説もあるって話だ

天武

じゃ、続き

安万侶

むぅぅ……なんか誤魔化された

天武

続くオモダルは、「面が足る」

天武

顔かたちや手足がすべて整い、身体が完成した神と考えられている

天武

イケメンの神様とも言われているぞ

安万侶

おー。人の姿ができた!

天武

そ。それに「オモ」には「思い」という意味も重ねられるからな

天武

身体だけじゃなく、物を考えたり感じたりする心も、ここで形を持ったんじゃないかな?

安万侶

なるー

天武

アヤカシコネは「ああ!なんてかしこいの!!」って意味だから、現代語訳にすると「まあ、なんてとうといことなんだろう」って感じだ

天武

だから、オモダルによって人の形が完成したことを讃える神だと考えられている

安万侶

ふーん。だからココだけ名前がついになってないんだ。おもしろいですね

天武

な。身体と心が完成して、それを見て「なんて尊いんだ」と感じる意識まで生まれた。そう考えると面白い

天武

そして最後が、イザナキとイザナミだ

天武

「イザナ」は「誘う」。キは男、ミは女。つまりペアで、互いに声をかけ誘い合う男女の神だ

安万侶

む?? ねぇねぇ、へーか、ここまでカタチの成り立ちだったのに、なんで急に「誘う神様」が出てきたんですか??

天武

そりゃ、戸に杭を打つためにはまず誘わないと

安万侶

戸と杭? さっき不比等さんが下ネタとか言ってた……

不比等

説のうちの一つだ

不比等

ソイツの話をマトモに聞くな。思考回路がジジイ化するぞ

安万侶

む??

安万侶

戸に杭を打つ下ネタ……

安万侶

はっっ!!!

阿礼

ほれ。おこちゃまが何か気づいたぞ

安万侶

はぁぁ?? まろ、おこちゃまじゃないし!!!! ちゃんとわかるし!!!!!!

天武

ふっ……だってさ。可愛くない?

阿礼

からかうなよ

天武

はいはい

天武

安万侶、他に質問は?

安万侶

え、えっと……
別天つ神のあとの、ここまでの神様が神世七代ですよね?

天武

そうそう。注釈にもあるけど、独神は1柱1代で数えて、ペア神は2柱1代と数える

天武

世界が少しずつ完成し、人が生まれる準備が整っていく過程が見えたんじゃないか?

安万侶

はい……

安万侶

なんか……この世界って当たり前にあるものだと思ってたから…………

安万侶

こうやって成り立ちのこと考えるの、心がほわほわしました

安万侶

こんな感じの気持ちのことを……「尊い」? って、いうのかな?

天武

ははっ! そりゃ、特別講義の甲斐があったな

天武

こうやって学び直すと、世界を大切にしようって気持ちになるだろ?

安万侶

はいっ!

天武

古事記って、こんな話がいたるところにちりばめられているからさ

天武

気付いた時に、「尊い」と思えるこの感覚、好きなんだよ

安万侶

ふふっ! 続きも楽しみです

天武

よし……これで身体も心も完成した。次は、その命を未来へつないでいく番だな!

安万侶

むん! ご教授のほど、よろしくおねがいします……!!

このページの神々

Author & Historical Supervisor:小野寺優
Illust:駒碧 × AI × Canva
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